(・・・今日の試合は完封されちゃった)
最初、何が起こったのかわからなかった。
自分の鉄山靠をカウンターで返され少々、ムキになっていた。
・・・私の攻撃の基点。
そこを相手も研究していた。それだけなのに。
今日は何も手につかない。次の手を考えればいい。
・・・考えなきゃいけないのに。
まったく、頭の中は霧が立ち込めていて何も考えられない。
これは、プロレスなんだから
勝ち負けは必ずある。今までだって負けた試合があった。
でも、何も出来ずに、こんなに圧倒的に負けたのって・・・はじめてだ。
そう思うと、瞳がとつぜんぼやける。
拭って、それが、涙だとわかる。やだぁ、私、負けて泣いてる・・・
それが、さらに涙を溢れさせる。
悲しいという思いが、感情が堰を切ったようにこの身に溢れてくる。
最初は嗚咽のように身を震わせ、しかしそれはやがて押し殺せられなくなり・・・
あっあああー・・・う、うわぁぁぁぁぁ・・・
私は大声で泣いてしまった。