桜庭愛vs武藤めぐみ
今日の桜庭愛はいつもとは大きく違った。
笑顔で観客の声援に応える風もなく、早々と、リングにあがり対戦相手の武藤めぐみを睨みつける。「再戦」を愛は武藤に打診した。その表情は真剣勝負を望み、武藤めぐみもそれを快諾した。ゴング前の静寂すら張り詰めたような緊張感で支配される。
高らかに鳴り響いたゴング。長い黒髪が一直線に武藤に殺到した。
膂力を脚力に込めて一気に踏み込んだスピード。そこからの右のストレートが武藤の右胸に突き刺さり蹈鞴を踏んだ。それを見逃さず愛の足が跳ね上がり武藤の首を凪ぐ。ハイキックを武藤に叩きつける。その威力に武藤はニヤリッと苦笑した。
(・・・そう、これが、マナの本気。)
・・・桜庭愛は女子レスラーであるが、その下地は他対一を旨とする中国武術。
桜庭愛の本気を引き出した。それは大きなアドバンテージだといえる。
しかし、勘違いしないでほしい。今までの試合が手を抜いていたというわけではない相手の技を受ける「プロレス」と相手の技をよける「格闘技」
その対極を少女は体得している。
好戦的な性格の愛はつねに相手を壊さないプロレスラーとしての矜持で闘う。
それを外し、相手を倒すと思ったとき、愛は路上格闘の猛者としての自分で闘うのだ
武藤の切り返しのジャブをバックステップで威力を減衰させ、
逆に下腹部に突き刺さるようなボディブローに大きく瞳を開き、武藤は口から涎が飛び散るのを感じた。打撃の応酬。この美少女プロレスに「拳」での攻撃は反則ではない。愛の身体が下に落ちる。武藤のストレートパンチを避け、
右の太腿が大きく痛みとともに折れ曲がるような重いローキックに身体が傾く。
・・・痛み。鈍痛に歯を食いしばって耐える。
動けないとみた武藤に愛は一瞥。巻き込むように身体を押し込んでくる。
(きたっ、・・・鉄山靠)
それは、武藤めぐみにとって千載一遇の好機でもある。
桜庭愛の動きを注視し、逆転の一手。愛が背中を向けた瞬間。
首筋に狙いを定め、飛びつこうとした。
この前もやった桜庭愛の得意技へのカウンター!
フェイスクラッシャーの体勢は完成しようとしていた。
その瞬間、武藤の鎖骨に鋭い痛み、まるで、袈裟切りにされたような一撃を食らってマットに叩きつけられる。その勢いはすさまじく二.三度、マットをバウンド。
「・・・くっ、この前の意趣返しってこと?」
大幅にスタミナを奪われ、肩に感じる痛みで大粒の汗を拭うことも忘れ、桜庭愛を見上げることしかできない。そこに、いつもの快活な笑顔があった。
「うん。確かに鉄山靠を破られたのは痛手だったけど、私の動きを注視して、
体当たりにカウンターをあわせてくるならその動きをフェイントに出来るかなって」
悲嘆にくれた控室で。涙の後に頭は冴えて・・・。
客観的に敗北を分析し、このカウンター返し。まさに意趣返しといえた。
「・・・私の得意技でお返しするなんて、さすが、愛ちゃんだね」
武藤めぐみは苦笑した。自分が仲良くし、リングで対峙する親友は大きな成長をみせつける。体当たりの体勢をさらに反転させフライングニールキック。
「あぐっ、あ、ああああー!」
疲弊した身体と大きく消費したスタミナでは愛の下腹部を狙った膝蹴りを避けることも受け止めることも今の武藤めぐみにはできなかった。
その瞳は衝撃に混濁とした色を見せ、鈍痛に前のめりに震える。
その身体を愛が逆さまに抱えあげた。
「あっ、がはっ・・・あっ」
後頭部に衝撃がはしり、身体はぐったりと弛緩している。
両脚のつま先はマットに触るように力なく、股間を上にしたまんぐり返しの格好で、
スリーカウント。逆転の返礼を武藤めぐみに叩きつけた。
第4試合
○桜庭愛(20分39秒.パイルドライバー)武藤めぐみ●
○桜庭愛(20分39秒.パイルドライバー)武藤めぐみ●
「あっ、愛。ああんっ、そこっ、だめっ!」
頬を朱にそめて武藤は身をよじった。愛は股間を上にした武藤のアソコを舌で上下。
唾液をたっぷりとまぶされ赤いハイレグは変色して、股間の膨らみ。クリトリスが発情し膨らんできている。愛は愛おしそうに股間に顔を埋めていた。
「あんっ、やぁ、イクッ、気持ちよすぎておかしくなっちゃうよぉ!」
何度もビクッと身震いしている武藤めぐみの姿をみて、
・・・セコンドの結城千種は黒い炎が瞳に宿る。それは、嫉妬にもにて。
「・・・赦さない、桜庭愛」
そう、誰にも聞こえない。しかし、感情むき出しの憎悪を愛にむけて解き放つ
誰のも気付かれることなく、新たな遺恨がここに生まれていた。