「どう・・・この状態で開脚してお客さんに丸見えよ?」
「うぐうぅぅぅ・・・!」
背中と後頭部を滅多打ちにされ、マットに座り込んだままダウンしてしまった澪に愛のドラゴンスリーパーが極まる。喉に愛の腕が食い込み、呼吸をふさがれると同時に頸動脈が締め上げられる。あっという間に意識が飛んでいくのを感じ、慌てて両腕で自分の首を締め上げる愛の腕を引きはがそうとするが、その瞬間に愛のハンマーパンチがボディに食い込む。首とボディへの複合攻撃の前に澪の動きが少しずつ鈍っていき、マットを蹴っていた足もいつの間にか力を失ってだらりとマットに投げ出される状態に。抵抗が薄くなってきたと判断した愛は技をとくと、だらりとなった香坂澪をうつ伏せにして・・・足を折り曲げて固定、首に両手を押し当てて一気に後ろに倒れロメロスペシャル、
開脚した両足をさらに広げ、観客にアピール)
「どう???・・・澪ちゃん、背中もお腹も痛いでしょ?これのために散々なぶってきたんだから、・・・さあ、見せて、意識をなくして落ちる様をね。あの香坂澪が失神開脚KOなんてことになったらどんな風に新聞の見出しを飾るのかをね。」
そうわざと顔が見えるように顎を引いてクラッチ、全身の体重を首で支えることになった香坂澪
・・・・その表情は?
「うううぅぅ・・・・・・!!」
高々と、愛のロメロスペシャルでつり上げられ、観客の前にさらされる澪。ミドルキックの滅多打ちに加え、ドラゴンスリーパーで息も絶え絶えのところに受ける拷問ロメロスペシャルに澪の体が自分の意思によらずビク、ビクと痙攣を起こす。震える体に鞭打って体をひねり、ロメロスペシャルから逃れようとするが・・・。
「ハァハァ・・・どう?苦しいの?」
身体をひねろうとすれば殴打されて痛めた箇所が激痛をあげて、背骨もきしみをあげる。顎につかんだのは自分で先ほどの打撃で痛めた箇所をさらに傷めさせようとする愛の陰湿な策略によるもの。激痛とともにさいなむ拷問技が外れた頃には大幅に澪の体力は減少し、大粒の汗だくになって濡れぼそっている。
「・・・さて、それじゃあ、とどめだね」
そう長い黒髪をゆらし笑顔で香坂澪を見つめた。
「そ、れは・・・どうかしら、ね・・・・・・!」
散々ロメロスペシャルで拷問にかけられ、全身を汗で濡れそぼらせながらも顔を起こして愛を見上げる視線に含まれる闘志は陰りを見せない。そして、受けを重視する澪は追いつめられてからが最も手ごわい。そのことを知る観客たちが期待を込めて声援を上げ続ける。
「ごほごほっ!・・・・・・く、この程度、反則にもならないわ・・・早く、離れなさい!」
愛のトーキックに蹴りつけられたわき腹を抑えながらよろよろと立ちあがり、愛の追撃を抑えるレフェリーを愛から離させていく澪。
「まだ、終わりじゃないわよ!全力で来なさい!」 立ちあがり、愛へ向かって来いと手招きをしていく澪。追いこまれているのは自分の方にも関わらず、挑発を仕掛けていく澪の様子に愛のファンが早くマットに沈めてしまえ、と愛に向けて声援を飛ばしていく。それに再び、平手打ちをしようとした愛の腕を掻い潜り密着してからのフロントスープレックス。愛の悲鳴がこだまする。
「さあ、ここからが私のステージよ!!」
愛を引き起こし、背後へと回り込むとボディへと腕をまわしていく。そのまま一気に体を伸びあがらせ、愛をジャーマンスープレックスホールドで人間橋をマットに掛けようとしていく。
「あぐっ、・・・ううううう・・・・」
後ろからしっかりと掴まれ押し付けてくる感触にうっと身を固めると後ろに引っ張られそのまま後頭部に強い衝撃に一瞬、意識が飛ぶ。・・・香坂澪の得意技、ジャーマンスープレックス、今日もリングに人間橋のアーチがかかる。しかしその負担も大きく、背水の陣といったところであろうか、身体は節々がキシミ、激痛をあげ、普通なら動くこともままならない。ひとえに香坂澪だチャンピオンにふさわしいレスラーであることを示していた。
「まだまだぁっ!!」 リングに愛の人間橋をかけた澪だが、怒涛の攻めの裏では全身を襲う軋みに歯をくいしばって耐えている。愛の攻撃を受け続け、ダメージは限界に近付いている。ここで勝負を決めようと、愛のボディに腕をまわしたまま足でマットを蹴り、愛を絵部固めの体勢に捕えると、ローリングジャーマンで再び愛をマットに人間橋をかけていく。
その攻撃に呆然とする愛だったがなんとか体勢を崩す、カウントは2ッー・・・!
フォールッ!!」 二連続のジャーマンスープレックスで愛を後頭部からマットへとめり込ませていく澪がそのままブリッジの体勢を保ち、フォールを要請。 レフェリー:「フォール!!・・・・・・ワン!!・・・・・・」 レフェリーが要請に応え、愛の脇でフォールカウントを取り始める。
「くぅ・・・こんなことで、終わらないよ」
マングリ返しの屈辱的な体勢で顔を赤らめながら身体を揺すって体勢を崩そうとする愛。
「くっ!」 愛をホールドしていた腕が愛が体を揺さぶることで解けてしまい、カウント2で解放してしまう。マットに崩れ落ちた拍子に愛の蹴りや締め技で痛めた全身が鈍痛を訴え、わずかな時間身もだえしてしまう。 「こ、の・・・・・・そろそろ、決めるわ、よ・・・・・・」 それでも、今は千載一遇のチャンス。投げ技の連続でダメージを負った愛をボディスラムで抱え込み、リング中央へと叩きつけて自らコーナーへとよじ登っていく。しかし、ボディスラムは消耗が激しくわずかに愛を持ち上げた程度でそれほどのダメージを与えられず、コーナーをよじ登っていく動きも試合直前からは見る影もなく弱弱しくなっている。
くぁ・あ、あああ・・・」
涎を滴らせ額に張り付く前髪がうっとおしい。全身汗だくと疲労感。倦怠感に身体を起こし、呆然としていたが・・・香坂澪の後ろ姿、震えながらコーナーをよじ登っていく姿はあまりにも鈍足で、愛もまた震えながら立ち上がると、コーナーのセカンドロープに澪が足をかけたぐらいに背後から腰を殴る。)
「さっきはよくもやってくれたわね・・・・おかえしだよ・・・」
香坂澪の両腿に頭をねじこみ腕を交差させサードロープから後ろにブリッジを描く、雪崩式JOサイクロン。
どかっ!「きゃ・・・!」 コーナーをよじ登り、セカンドロープに足を乗せたところで澪の背後から愛が腰を殴りつけてくる。普段の澪なら大したことはないダメージだが、疲労困憊の今の澪には致命的なダメージ。足がふらつき、コーナートップにもたれかかって動きが完全に止まってしまった。
「あ、ぁ・・・・・・」 コーナーを中途半端に上ったままうずくまってしまった澪を肩車の体勢に愛が捕え、JOサイクロンでマットへと投げ落としていく。スピードも鋭さもないが、高度を持った一撃が澪を後頭部からマットへとめり込ませ、澪はリング中央に叩きつけられた体勢のままダウン!
「・・・行くぞォー、香坂澪」
おぁーたてぇー(と愛も呂律が回らず、澪の前髪を掴んで強引に立ち上がらせるとそのまま膝蹴りを下腹部にめりこませ、強制的にお辞儀をされると澪の腰を掴みいっきにパワーボムにもっていく。
ハァハァハァ・・・・今日の最強はこの私だぁーと会場す ずっだああぁぁぁんっ!!
「ぐはぁっ!!」 澪の闘志と希望を打ち砕くかのような愛の力を振り絞ったパワーボムでマットに上半身をめり込ませ、がくがくと体を震わせながら両腕をマットに投げ出してダウンする澪。そのままエビ固めの体勢で愛にフォールされるが・・・。 「うわあああああぁぁぁぁぁっ!!」 もう駄目だ、と澪のファンが嘆声をあげ、愛のファンが歓声を上げる中でフォールカウントが1を数えるよりも早く澪が絶叫を上げながら体を跳ね上げてフォールを返す。 「か、つのは・・・・・・わたし、だぁ・・・・・・」 顔を上げ、呻くように声を上げる。しかし、受けたダメージは甚大で立ち上がろうと手をマットについていくが、腕に力がこもらず何度もマットに顔を打ちつけて倒れ込んでしまう。・・・今度こそ決める!愛もダウン寸前、もう一度、澪を捕まえるとコーナーに前髪を引きずりながら上にあげ、そこからカナディアンバックブリーカーのような体勢にしつつ雪崩式のパワーボム「ストーンレインラストライドを放つ。
ずっううううぅぅぅんっ!!「・・・・・・・・・・・・!!」 コーナーに無理やり登らせされ、愛の肩の上へとカナディアンバックブリーカーの体勢で捕えられた澪がなんとか逃れようと弱弱しくもがく。しかし、パワーボムのダメージで限界を迎えた体は愛の拘束から逃れることができず、そのままストーンレインラストライドで豪快にマットへと沈められてしまった。 「あ・・・・・・ぅ・・・・・・」 後頭部がマットに深々とめり込み、意識が飛んだ澪の瞳の瞳孔が開く。呆然と天井を仰いだままピクリとも動かない澪にフォールカウントが入り始めるが、澪はフォールを返そうとする動きすら取れない。
汗だくの肢体に水着が張り付き両脇が露出しているとは言え汗でぬめる気持ち悪さ、渾身の力で一度マットがたわむほどの衝撃、「石の雨」の名は伊達ではなく、香坂澪の黒髪がマットに散らばる。ハァハァと涎を滴らせながら疲労感にこの体制のまま必死にカバーする。レフリーのまくしたてるようなカウントすら耳に響かず、ただ・・・鳴り響くゴングに呆然とした視線でほうけている愛。スリーカウント。試合の終りを告げる鐘は高らかに・・・愛の勝利を告げていた・・・・。