…腰まである長い黒髪を靡かせて少女は意気揚々と笑顔をみせて、
商店の立ち並ぶその奥にその闘技場は門戸を開いていた。
世に知られるようになった女子プロレス団体が此処を根城にしている。
―美少女プロレス。
見目麗しく、可憐な少女たちがあがるリング。
今夜も熱い試合が繰り広げられるだろうそのリングは地下街のさらに下、階段を下りた場所にあった。
地下街の突き当たり。重厚な門が薄暗い口を大きく開け放っている。
威圧的な様相。そこ眼前に立った少女を見かねた人々が声を掛けた。
「愛ちゃん、…これから試合かい?」
声を掛けられ、いつもの笑顔。天真爛漫に微笑を返す少女はコクンと頷いて、
「あっ、はい。いつも、応援ありがとうございます♪」
「礼を言うのはこっちだよ。元は寂れたセンター街だったこの商店街が活気付いたのは愛ちゃんたちのお陰なんだし」
彼女たちの試合を見ようと此処に人が集まり、
その人々の要望をかなえる形で閉まっていた商店は店を開け始め、美少女プロレスは認知された事によってこの町は活気を取り戻した。人々の衆目の的。
曰く、ー桜庭愛が興したのはそういう類の奇跡。
少女の強さは多くの異邦人を呼んだ。
多種多様な外国人。時に、異世界を旅してプロレスを広め、それに興味をもった人が此処に集まる。商店街は異世界との門前町となり、ファンタジーのギルド街の様に、
発展していった。
軽食屋から、本屋、宿屋…など。此処は「非」現実の町となる。
その中心が、薄暗い回廊の奥。下に続く階段を下りた先にある地下闘技場。
そこは、18禁の女子プロレス。
ふたりの可愛らしいアイドルレスラーたちが歓声に笑顔で手を振っている。熱気が会場を燃やす様に中心のリングで対峙したふたりは、相手を見つめる
愛は胸元に白い線のはいった蒼いハイレグ。
対する小沢佳代はピンクのハイレグ姿ではにかんだ微笑を浮かべて
「 まなちゃん、今日は負けないよ」小沢佳代は、そう呟く。
試合のゴングが鳴り響くと、まずはリングの中央で力比べ。
「 まなちゃん、今日は負けないよ」小沢佳代は、そう呟く。
試合のゴングが鳴り響くと、まずはリングの中央で力比べ。
お互いに意地にかけてもと引かず、一進一退の攻防の最中、疲れの表情を見せはじめた桜庭愛を一気に押し倒す様にコーナーに叩きつけると、桜庭愛の胸元に甲高いチョップ。
「あぐっ、あっ、ああっ…!」
ビクッと身震いしてしまった愛をボディスラムに叩きつけ、起き上がり際にロープの反動をつけ跳躍したドロップキックで再度、ダウンさせ、うつ伏せ状態の愛の足を掴み、逆エビ固め。
「あがっ、あっ、あっ、ああああーっ!」
下半身が軋み、両足を後ろに反らされて涎と共に苦悶の悲鳴が吐き出される。
歯を食いしばりロープに手を震えさせながら伸ばす愛とは対照的に時々観衆に恥ずかしそうに手を振る小沢佳代。
ロープブレイクしたものの、立ち上がりが鈍い愛。
小沢の身体が躍動するようにスワンダイブ式フライングニールキックの直撃。
「あっ、あぐっ…!」
体重をのせた攻撃にフラフラになってしまった愛。
「愛ちゃん、…気持ちよくさせてあげますね♪」
小沢は桜庭愛を抱きしめ、腰を圧迫する強烈なベアハッグ。
「くひぃぃぃぃぃッ…!」
両目を見開き、痛みに涙が流れ落ちるほど、顔を背け、呆然とする愛。
半ば失神気味に崩れ落ちる。
「あっ…!」
ビクンッと小沢佳代が震えた。
涙目の愛が下腹部に拳をみまったからだ。フィニッシュにいこうと愛を抱き起こした油断。前屈みになった小沢の頭を股に挟むように持ち上げた愛はパワーボム。
「あくんっ、あくんっ…!」
呆然とガクガク頭を揺すって身震いしてしまっている小沢佳代を股間に顔を埋め、
全身の力で押さえつけてフォール。マングリ返しの屈辱的な格好で3カウント。
30分1本勝負。
○桜庭愛(19分18秒.パワーボム)小沢佳代●