「…まな.ちゃん.魔の種って知ってる？」
そう、尋ねられたのが「それ」を知るきっかけだったと思う。
…何でも、自分の力を底上げしてくれるという付与アイテム。それで強くなった選手が居る。その程度の情報だった。
美少女プロレスを運営し、団体の暫定チャンピオンでもある桜庭愛。
身に着けるだけで「強くなる」なら、所属選手に付与させてやりたいと思うのは、
この少女が優しいからか。
(その強くなった子と試合したいな･･･どれくらい強くなるんだろう？)
自分の積み上げてきた修練に絶対の自信をもつが故の傲慢か。
ともかく、興味なさそうにこの時は話を切り上げた。
興味をもったのは、それを使ったとされる選手からの「挑戦」を受けてからだ。
眼中になかった下位ランキングから破竹の勢いで勝ちあがり、
所属する地下闘技場の序列１位を倒してしまった。そして、うちの団体に挑戦状を叩きつけたのだった。･･･受けるのも吝かでない状況下、
その挑戦を受けることにした。
･･･ただし、何戦か、所属選手と試合をした後で。
私はすぐにでも試合を受けるつもりだったが、所属選手側から「申し出」が殺到し、
急遽、その慮外者を含めたトーナメント戦が組まれる。
暫定チャンピオンの座を虎視眈々と狙う親友たちの思惑を汲んだ結果･･･
…こうして、私は『魔の種』と関わることになるのだった。
その根源が私が『撃退士』として相対する悪魔に起因する力だと気がつくまでに
何試合も行い、それに感染した選手を解放しなければならなくなる要因。
…それは、私の何気ない【好奇心】からだったのだ。