開放されたのは2年前。そこから復興がはじまっている。
故郷に帰るのは2年ぶり。16歳…私は地球にいなかった。
《特異者》として異世界を冒険していたから…
助けを求める声。それに応えて…
荒れ果てた故郷。
所々で見かける破壊の爪痕。
ここは人の住める場所ではなかった。
それでも、群馬の人々は外の人々の救援を信じ抵抗を続けたと聞いた。だからこそ私は信じている。
(私の両親の生存…を)
最大の激戦地「前橋」の郊外。
かつて源義経の6人の家来が居を構えたとされる町の由来
「あぁ、帰ってきたんだね?」
町の人が私を見るとそう微笑む。
私は泣きながら目に涙を溜めながら家を目指す。
…生きていてほしい。絶望的な希望だってわかっている。
でも、生きていてほしい。
…そう、願いながら寿延寺の境内に差し掛かった…
「おう。おかえり♪」
その声に顔をあげた。巌のような体躯で少年のように微笑む。父の顔。
「放蕩娘がやっと帰ってきたな」
「むー、ひどいな。久しぶりに見た娘に開口一番がそれなの?」
私の言葉ににやっと苦笑する。その目に涙を溜めながらそれでも気さくに…
(もう。お父さんだって泣いてるじゃない)
父、桂は元気な顔で今までの事を話してくれた。
県庁が悪魔の手に落ちたとき、それに呼応して刑務所の門が破られ悪漢だちが野に放たれたらしい。その人たちは悪魔と化して殺戮を繰り返し父たちは町の鎮守の社にある武具を開放。源氏の末、鬼殺しの綱の血を受け継ぐ桜庭家の当主として
悪魔を討ち、他の5人の末裔にこの地を任せ、県内を冒険していたらしい。
「私が異世界に召還されてたって信じるの?」
「ああ。その事か。俺もそういう経験はした事があるからな…」
それは、眉唾。…本当なの?
「すごいだろ。父さん。織田信長を親友と倒しちゃったんだぜ?」
…もう、そっちの方がウソっぽいよ。
2年ぶりに再会した親子は自分の冒険譚に花を咲かせる。
父も、そして娘も違う道を歩いている。その絆を信じ共に歩くことだけがすべてではない。それを父と娘は語る物語の中で納得し、そして認め合う。