○マイティ祐希子(19分40秒.パワーボム)桜庭愛●
「今日もがんばるねー♪」
スポットライトの照明がリングに降り注ぎ、今から闘う選手たちに光彩を浴びせる。長い長髪のレスラーたちが薄闇から衆目の中に浮かび上がる。
「さぁ、試合開始だよ。愛ちゃん♪」
楽しそうに微笑む祐希子に愛も笑顔で頷き、会場に高らかに試合開始のゴング。
腕四つにリング中央でぶつかり合ったふたりはお互いの意地をかけて指を交錯。
額に汗が浮き出るほどの一進一退の攻防を繰り広げ、観客の声援をあびる。
一気に気勢を制しようとする桜庭愛をしっかり受け止めたマイティ祐希子が先制を奪い愛の胸元にエルボーを叩きつけ痛みに顔を顰めた愛。
ロープに振って、ロープの反動をつけての跳躍でドロップキックを愛に叩きつけると、起き上がるタイミングでジャンピングニーが炸裂!
「あっ、あんっ、あんっ・・・!」
ビクッと衝撃に戦慄く愛だったが、掴みかかるマイティをいなし、ブレーンバスターで背中をマットに叩きつけると、今度はマイティ祐希子の首筋に強烈なラリアット
「あうっ・・・んんっ」
再び、マットに叩きつけられ大の字にダウンを喫したマイティ祐希子。
その足を掴み、足首を捻り、体重を掛けて引き伸ばすアキレス腱固め。
「あがっ、くっ、ああああああーっ!」
ビクンッと大きく身震いし痛みに口元から涎と共に苦悶のあえぎ。
しかし、ギブアップには至らず、ロープに手を伸ばす祐希子を痛めつけたがロープブレイクされて、技を解除されてしまう。顔を顰めつつ立ち上がるマイティ祐希子
(んっ、動きが鈍い。チャンスだね♪)
精彩を欠く動きのマイティ祐希子の後頭部に突き刺さるコンビネーションキック。
痛めた箇所をローキックで追撃した愛は横に崩れたマイティのがら空きの下腹部に後ろ回し蹴りでロープに押し込む。
「あうっ、あああっ・・・!」
痛みに両目を見開き、涎を噴出してしまう嗚咽の様な表情。
振り向き様に叩きつけた一撃は遠心力もあいまって首筋を大きく蹴り込む勢い。
崩れ落ちるマイティ祐希子を一瞥し、愛は試合を決めるために反対のロープに走り、
フランケンシュタイナーを仕掛ける。
「さぁ、これで、決めるよ!」
祐希子の首に巻きつく両腿だったが、祐希子は前のめりになった身体を制止。
その勢いのまま、愛の後頭部をマットに叩きつけるパワーボム一閃!
「あがっ、あっ・・・・」
大股開きで丸め込まれ、茫然自失のまま、押さえ込まれ3カウント。
混濁とした意識の中、押さえ込むマイティ祐希子の触れた体温だけを感じていた。