それが世界を脅かす事がある。
世界に介在する個人の主張は時として悪意となる。
それを危惧する俗に言う神からを依頼を受け、捜査し原因を突き止め、対処する仕事を請け負うのがこの探偵社である。
自身もまた、運命改変や事象操作に関わることが多く、
不正を働ける立場になりうるため、厳格な守秘義務が存在し、
この仕事も副業的な立ち居地にしていた。
・・・酔狂な事だと。愛は思う。
別に他の世界がどうなろうと仔細、こちらに関係はない。
ただ、自分は、お節介な性格で、ひとが困っているというのがどうしても我慢できず
助けを求める声に応えたいと願ってしまう。そんな性格だ。
・・・少女は七星剣武祭で優勝し、騎士の中の騎士を称号を得た。魔導騎士にあって最高の称号、七星剣王の頂に立った猛者。
伐刀者としてその名を世界に知らしめた少女は、彼に言った。
「うん。黒鉄くんならきっと、なれるよ。七星剣王に♪」
努力が最後に結実しなければおかしいと少女は泣いた。
誰かの痛みに少女は義憤し、誰かの叫びに彼女は手を差し伸べる。
落第騎士の英雄譚の影に、その少女の優しさと強い思いやりが黒鉄一輝の背中を押した事は紛れもない事実。彼は、黒鉄一輝は立ち上がる。諦観から一歩踏み出すのだ。
・・・こんな自分のために「親友」は泣いてくれた。
堕ちこぼれでは無いと。自分から諦めるなと。少女はこんなにも弱い僕を抱きしめて
励まし、戦う力を与えてくれた。だからこそ、―此処に誓う。
いつか、この誇り高い騎士に勝ちたいと。
破軍学園にあって、その少女を知らぬものはいない。
「今回は、この世界の調査なわけね?」
依頼書に眼を通し、渡された破軍学園の制服に着替える。
「はい。転生者はどのような能力を付与しているかわかりません。
それなので、こちらは貴方が動きやすい様に「最高の肩書き」を付与しました。」
・・・資料に眼を通す。
魂の具現化として霊装と呼ばれる武器を具現化する「伐刀者」
魔力を込めて戦う自分にとっては戦いやすい世界といえるだろう。
「それで、私には制限がつくの?」
・・・いいえ、当初、大鎌遣いとして登録を考えていたのですが、別の転生者との戦闘を考慮し、桜庭さんの得意の拳法で登録いたしました。
あなたの肩書きは、一年前に出場した七星剣武祭で優勝した学生です。
ゆっくりと世界が軋み、崩れていく。
目覚めが近い。世界に入り込み、ベッドにもぐりこむ夢の中で依頼者とコンタクトをとるのがこの依頼の通例である。この夢の中の作業や目的の確認が、私の身体をこの世界観に順応させていくひとつの過程・・・
目覚めが近い。すべてが真っ白になって・・・
魂の具現化である霊装は自分の戦闘力を再確認し、十全に機能を確認する作業でもある。寝ているうちにすべての「設定」は終わり、起きたとき私はこの世界の一員となっている。設定の最小限の改竄。それが、私に与えられた固有霊装であった・・・