○桜庭愛(20分32秒.スワンダイブ式フライングニールキック.)武藤めぐみ●
「・・・まなちゃん、今日の試合、負けないよ」
その答えに、愛もコクンッと頷く。
・・・負けたくない。負けられない。
それは、同じ思い。同じ思いを胸に秘めて、
リングにあがる少女を自分と同じ親友だと愛は思う。
《カーーーン・・・!》
試合の開始を告げる鐘の音が鳴り響く中、長い黒髪が殺到していく。
繰り出す蹴りの一撃、ハイキックがこめかみを打ち抜き、武藤めぐみは苦悶の表情で蹈鞴を踏んで後退。蒼いリングシューズが小気味良い靴音を立てる。
「はぐっ、あっあうっ・・・!」
口元を押さえ、吐き気を堪える。愛の膝蹴りの一撃が下腹部にめり込み、
めぐみはよろける。そこに愛は掴みかかり、フロントスープレックス。受身は取ったがダメージは大きい。すぐに立ち上がれない。
「あがっ!」
両目を大きく見開き、ビクンッと震える。
低い体勢から唸った愛の豪腕ラリアットが炸裂し、武藤めぐみの首を薙いだ。
《ロープブレイク!》
レフリーの制止の声が響き渡る。
ダウンを喫しためぐみをうつ伏せにして逆エビ固めでグイグイと痛めつける愛。
痛みに悶絶し、切ないあえぎをあげる武藤めぐみはマットをにじり寄り、
震える指先で、しっかりとロープを掴んだ。
「くっ、・・・この激しさ。いつもの、愛ちゃんだね。」
一気に流れをもっていく激流の様な攻め立て。
しかし、武藤は今、しっかりとした足取りで急流に逆らう様に奮い立つ。
再び、一気呵成に攻め込んでくる桜庭愛。
ジャンピングニーを前転するように転がって避けた武藤は背後を奪い、
ジャーマンスープレックス。愛の長い腰まで伸ばした黒髪がマットに散らばり、
後頭部をマットに叩きつけられる。
「あぐっ、あっ、ああああーっ」
衝撃に揺らぐ視界。レフリーのマットを叩く音にビクッと身震い。
跳ね上がる様にフォールを崩すものの、そのまま、ドロップキック、ローリングソバット、片足をついて青色吐息の際を狙われ、閃光魔術が直撃。
たっぷりと側頭部に強烈な一撃をもらって蒼いハイレグ水着が崩れ落ちる。
「くっ・・・負けない」
よろよろと立ち上がった桜庭愛。
相手は避けらないと判断したトドメの一撃。
繰り出しれたスワンダイブ式フライングニールキックの直撃を受けてれ、半ば失神気味になってしまった愛。そんな愛の片足を折り曲げ、武藤が3カウントでフォール。
試合終了のゴングが鳴り響くなか、愛は敗北を喫してしまった。