第1話 戦い
そこが何処かはわからない。夢の中である。現実味のない風景、
そこが何処かはわからない。夢の中である。現実味のない風景、
そこに見覚えのある少女の背中があった。長い黒髪の少女の後姿、それは、私だと認識したとき世界は私の見る風景に変わる。いつもの試合水着姿で世界を旅していた。
場面はさまざまに移り変わる。
戦乱の時も、喧騒の時も変わらないのは私の矜持と信念。
多くの出会いがあり、強敵との邂逅があり、教えられる戦いがあった。
(…そうだね。私はどこにいたって変わらない。)
まなの視線の先に出会った人々の笑顔があり、そして、自分の笑顔がある。
(…そうだね。私はどこにいたって変わらない。)
まなの視線の先に出会った人々の笑顔があり、そして、自分の笑顔がある。
その笑顔の後ろに自分と、もうひとりの少女。
二人の少女が戦っているリングがある。多くの出会いと自分より強い女(ひと)と出会いたい。闘いたいとこの道を歩いてきたのだった。
(…あれは誰だろう?)
思いめぐらせばさまざまな親友たちの顔になる。
試合は白熱していた。間合いをとった相手に殺到するように距離を詰め、腰を捻り蹴り足に力を籠める。跳ね上がった回し蹴りは相手の首筋にめり込み苦悶の声をあげさせる。それをチャンスとみた私は、一歩、大きく踏み込んだ。
相手に背を向け、肩を相手に当てるような体当たり。
桜庭愛が得意するとする動き。相手が衝撃にロープに飛ばされる。
長い黒髪が揺れ動く、相手がロープの反動で身体が泳いでいる。その背後を掴むと相手の腕を交差し、後ろに反り投げる。後頭部がマットにめり込む音。
…ゴングが高らかに鳴り響いた。
「にゃっ?」
意識は未だ霧中の中にある。目覚ましのサイレンはけたたましく鳴り響き、
少女に覚醒を促す。自室の布団から身体を起こし、携帯電話のアラームを止める。
その頃には、はっきりと意識は覚醒していた。
洗面台で顔を洗い、ブラウスに袖を通す。
寝間着というものは着た事がない。幼少の頃は着けていた気もするが、今は、
ランニングシャツにショーツ姿で寝るのが日課になっていた。
これで親がいれば小言のひとつもあるのだろうが、実家から離れ、寮生活の身の上には気楽なものだ。学園の寮からすぐの場所に学び舎はあるためそんなに慌しくはない
とは言っても、生憎、学校のカリキュラムはひとつも落とせない身の上。
とは言っても、生憎、学校のカリキュラムはひとつも落とせない身の上。
手早く着替え、自室を後にした。
午後、いくつかの選択授業を受けたあと、早々と学園の門を出る。
向かうのは繁華街。その一角の路地を入ると、そこに暗い階段がある。
階段は下へと伸び、しかし、少女は臆した様子もなく身軽な様子で下に下りていく。
そこには四方30席程度の観客席。
薄暗い会場で中心に設置された試合会場のみが印象に残る。
「…ようこそ、私の美少女プロレスへ♪」
ここがもうひとつの私の世界。私があがるリング。
ここでの戦いを行ううえで、学校の授業は疎かにしてはいけない。そう誓っていた。
学園に認可された部活動であり、営利団体でもある。
もとは…ある組織が運営していた闇プロレスのリング。
そこを叩き潰したまではよかったけど、問題はそこからだった。
その闇のプロレス団体は『特異能力者』を勧誘し超人レスラーを生み出そうとしていた。その『特異能力者』であった私だからこそ、闘う事が出来たし、
この学園に編入もできた。ここは『特異能力者』専門の学び舎であった。
だから、学園のお膝元でそんな闘技場が生まれた。
野望を叩き潰してはみたものの、選手たちの中には未開発地域から買われた少女たちも多く含まれており、路頭に迷うのは確実だった。
学園側は私の女子プロレス団体設立という案を受け入れ、
私は多くの外国人選手の里親として管理責任を果たすため、学校と、試合会場。
そして、この特異能力を悪用する悪い人たちと闘うことで認知されている。
「ここまでは、設定ですね。次からは小説にむけて描いていきますよ」